以前、勤務していた敷地内に、ソメイヨシノの木がたくさん植えられていた。落ち葉が道路や民家にたくさん落ちるので迷惑がかかると思い、木の枝を大きく伐採した。そうしたら、地域の方から、何で切ったのかと指摘されたことがある。まわりの人も桜が咲くのを楽しみにしている。それぐらい、桜の木は、公園などにも多く植えられ、みんなに愛される日本を象徴する木である。
5月の中旬、公園を散歩していると、上の写真のようにソメイヨシノの木に赤い実(果実)がなっていた。食べられるサクランボになるのだろうか。
実は、サクランボみたいな赤い実(果実)は、普通に食られるおいしいサクランボにはなりません。別の種類です。
ソメイヨシノの特徴
有名なソメイヨシノですので、みなさんもよく知っていると思いますが、特徴をまとめてみました。
・江戸時代、オオシマザクラとエドヒガンという桜の交配によってできた説がある。
・その1本から接ぎ木によって全国に増やしてきた。
接ぎ木という増え方は、オスとメスという有性生殖で増えるのでなく無性生殖といわれ、細胞からそのまま増えていく。いわゆるクローンである。サツマイモがイモで増えるのも同じである。
・つまり、全国のソメイヨシノは、すべて遺伝子が同じである。形質は同じになる。だから、例えば、花の咲き方は、同じ地域なら、どの木もいっしょに一斉に咲く。
・戦後になり、その美しさゆえ、学校や公園などにたくさん植えられた。やがて、ソメイヨシノは、大木になったが、よく虫に食べられ、幹に穴が開いたり、風で倒れたりする。寿命が短い木である。
・古いソメイヨシノは、植え替えられている。ただ、青森県の弘前城公園のソメイヨシノのようにうまく育てれば長く生きるようです。青森には、リンゴの木を育てる技術があるからそうです。
日本の桜も、花が咲いたら、実もできる
日本に古来から自生する桜の木はヤマザクラなど10種類ある。また、ソメイヨシノなど品種改良によってたくさんの種類の桜を栽培品種として花見などに利用されてきた。これらの仲間のすべてに共通するのが、咲いた花に、同じ木の花粉がめしべについても種子ができないということです。自分以外の木から、虫などによって花粉を運んでもらわないと受精し、実を熟すことができません。
しかし、ソメイヨシノは、近くに咲いているソメイヨシノもすべて、遺伝子が同じクローンなので有性生殖はできず、種子もできないはずです。
種子ができないはずのソメイヨシノに実がなるのは、なぜ?
じつは、ソメイヨシノは、他の種類の桜の花粉と受精することで、実がなることができます。写真を撮った公園には、ソメイヨシノ以外に野生のヤマザクラの木の花がたくさん咲いていました。ヤマザクラの花粉で受精し、実が成長したのかもしれません。
できたソメイヨシノの実は、食べられるのでしょうか。
詳しく知りたい方は、次の本がおすすめです。樹木としての桜がよくわかります。
できた実は食べられるサクランボにならない
できた実は食べられるサクランボになりません。上の写真は、落ちていたヤマザクラの実です。小さいうちから、桜の実は、落ちてしまいます。ヤマザクラやソメイヨシノなどの桜の実は、あまり大きくなりません。また、食べても渋みがありますので普通は食用にしません。
実は、サクランボができる木は、別の種類の木です。
それでは、食べることができるサクランボは何という木になるの?
セイヨウミザクラ(西洋実桜)とよばれる品種です
さくらんぼができるのは、セイヨウミザクラ(桜桃)とよばれる品種です。日本には、自生していません。品種改良により、色や大きさの違ういろいろな種類が生み出されていきました。佐藤錦という種類は有名です。主な産地は山形県ですが、山形の盆地の地形と気象が木の成長に合うからだと言われています。2位は、北海道です。
まとめ
ソメイヨシノは、クローンのため、同じ仲間と受精できないがヤマザクラなどの他の種類の桜と受精し、実をつけることができる。しかし、食べられるサクランボではない。サクランボができるのは、セイヨウミザクラという別の品種で、品種改良によっていろいろな種類できた。